自然を遊び:自然に遊ばれる 終了しました
自然を遊び:自然に遊ばれる
社会と環境がうけたトラウマについての創造的な実践を試みるグループ展
会期:4月15日(月)
時間:17:00-19:00
会場東京芸術大学上野キャンパス油画ギャラリー 絵画棟1F
座談会特別参加:高山登氏
キュレーター:ジェームズ・ジャック
青野文昭 (仙台) マイカイ・タブス(ホノルル) 吉野祥太郎(東京)
同時開催:Satoshi Koyama Gallery
会期:2013年4月12日(金)- 5月18日(土)
開廊時間:水・木・金・土13:00 – 18:00 (月・火・日・祝 休廊)
助成:野村財団 協力:東京藝術大学
本展に参加する作家たちは、創造的な方法により、社会と環境が受けたトラウマのつながりについて新しい見方を提示しています。曖昧な「環境」という言葉を定義するとすれば、それは私たちが直接または間接的につながっているもの、つまり私たちの一部と考える事ができます。彼らは、普段見落とされがちであったり肉眼では捉えにくい’環境という場所’に目を向け、生態系とその一部である私たちの身体について深く探求します。ここで作品は、既存の自然という価値に囚われず、むしろ変化する環境と結びつき、それ故世界と影響を及ぼしあう双方向的な関係性を提示しています。それは’環境がうけた’トラウマを反映する一方で、私たちの生命と他の動植物との親密な関係についての豊かな物語となって語られています。
東日本大震災の被害を直接受けた青野文昭は、津波で打ち上げられた瓦礫を溶接して彫刻を制作します。ハワイ出身のマイカイ・タブスは、使用済みのVHS テープやプラスティックのフォークなど、その土地にある廃棄物を美しい花へと変化させる、創造的な価値交換を実践しています。彼らは、資本主義社会ではもはや価値のない廃棄物に、再び存在する目的を持たせる方法を問いかけます。メアリー・バブコックは、太平洋に捨てられた漁網の破片で、美と悲劇の境界線を探ります。フィリピン人作家のリンゴ・ブノアンは香煙をギャラリースペースに毎朝漂わせる日課によって、生命力の回復を促します。長年ニューヨークで環境をテーマに制作を行うジャッキー・ブルックナーは、土壌を媒介として親密につながる人の身体と植物の細胞器官をドローイングで表現しています。吉野祥太郎は、地球の表層下に眠る、地質学的・社会的な時間の層を掘り起こします。池添彰は、身体が樹の幹へと成長してくという象徴的な融合を描くことによって、自然をより広義な存在としてとらえる視点を提示します。本展が提示するのは、すでに存在しているものの中にある可能性です。私たちが考える狭義な「自然」という概念は、ひょっとしたらトラウマからの回復を妨げているのかもしれません。作家達は「(私たちが考える)自然の後に来るもの」を見せることによって、私たちが今日直面している問題についてのより広い視野を提示します。作品の中では、私たちの日々の生活とそれを取り巻く環境の曖昧な境界線が認識され、問われ、そして遊ばれています。そしてこれらの作品の中で、現実と架空の狭間は、新しい可能性を見出すために開かれ、世界が今直面しているトラウマについて幾つもの創造的な解決策を提示しようと試みられています。